古書買取人までのストーリー。仕組まれた試練その11 これはある古書店で行われているフィクションの修業物語 古書買取 古本見積 大山堂書店

これはある古書店で行われているフィクションの修業物語

≪修業のひと段落(後半)≫

「結婚、おめでとう!」

結婚式場にはお祝いの掛け声が飛び交っている。


それを見ながらにこにこしながら主賓の席に座っているのは店長。


花嫁の手を握り、結婚指輪を指に通しているのは例の若い店員である。


新婦側の両親席には、以前の古書買取現場で派手なポロシャツに襟を立てて遺影に写っていた初老の父親と、仏壇に話しかけていたその妻が並んで座っている。(←要、前々回の記事参照のこと)


「うちの娘を紹介したい」と言っていた方法がまさか古書買取現場を使って仕組んでいたとは…。


今、挨拶で舞台に上っていく店長はこの運命を占っていたのだろうか。

「ご結婚おめでとうございます。私はご両親の古くからの友人で、ご挨拶させていただきます。私の店の店員とまさかこのように結ばれたのは占いの示した運命だったのではないでしょうか…」

店長が馴れ初めを話し始めるので若い店員は当時を思い出していた。


二回目にお伺いした時、なんと店長はすでに彼女の部屋で本棚をみていた。

「店長、もう来ていたんですか?現地待ち合わせって言ったって、中で待っているなんて…」

「お前がどのように仕分けしたか見たくてな」

彼女が丁寧に挨拶をする。

「先日は取り乱してしまいましてすみませんでした」

「いえいえ、私もいろいろ勘違いしていたみたいで」

今回会った時のほうが断然綺麗に見える。若い店員のほうが何を話したらよいのか取り乱しそうになった。

「お前が来る前に時間があったからお客さんとお前の話をしとったんだが、確かお前はバツイチとかではなかったよな。彼女もおらん一人もんで…」

「店長!余計なこと大声で言わないでくださいよ」

若い店員は顔が真っ赤になっている。

店長はなぜ大声でこのような確認ごとをしなければならなかったのであろうか。


それは、

すぐ隣のドアに例のポロシャツの父親とその妻が聞き耳を立てているからであった。

「うまくいってほしいな、母さん」

「うまくいくに決まっているわ、だってあの子が占って運命の人と出たんですから…」

「しかしもっと会話がよく聞こえたらよいのだが」

「あなたの耳が遠くなったのよ」

父親の方はまたサプライズで出ていくタイミングを計るためなのだろうか、耳をドアに押し付け、なぜかポロシャツの襟をピンと立て直している。

「おい、母さんや。なにやら娘を『貰い受けします』というような話をしているらしいぞ」

「あら!店長がどんどん話を進めてくださったのかしら?」

古書買取現場では、「○○円で貰い受けします」や「(これら生きてきた証である古書を)大切にします」なんてことはよく話されているのだが…。

「おい!うちの娘を『大切にします』って言ってくれているようだぞ…」

涙腺が緩くなった父親は感極まって「おめでとう」とサプライズのごとく出ていくタイミングを逃したかのようだ。感涙にむせている父親を横に妻が聞き耳を立てると、

「よし、そうと決まったら紐で縛って車に詰め込むぞ!」

と、訳のわからない会話が話されているのに驚いた。

「あなた!うちの子を紐で縛って連れていくって…」

父親の涙跡のある顔が赤鬼と変わってドアを開けると買い受けた本を縛って車に運んでいる頼もしい若者がキョトンとしていたっけ・・・。


結婚式場に笑い声が続いている。


「みんなが騙されたようで私は愉快でした」

花嫁も両親も苦笑している。父親は感涙を目に溜めているようにも見える。店長のスピーチは終わりに近づいていた。

「この若い店員は古本を見積もっているようで、実は自分自身が相手から見積もられていたことを知ったわけです。一人前の古書買取人になるには、紳士な態度で真剣に見積り、そして『手放すお客さん側、貰い受ける店側、そして古書たち』の三方良しとなってはじめて幸せが循環するということを念頭において作業しなければなりません。さらにこれからは隣にお座りの花嫁さんと幸せの環を強く広げていけることを祈っています。ご結婚、本当におめでとうございます」


泣き笑いの会場。とりわけ若い店員が号泣している。

結婚というめでたい日に古書買取人としての薫陶を皆の前で受け、一人前の古書買取人として認めてもらえたような気がした。

試練はまだまだ続く。

今度、この若い店員があなたの家に古書買取にいく時はどうか温かく迎えて欲しい。

書籍を通じて人は出会い、成長していくものだから・・・。

終わり
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このシリーズは今回でおしまいです。次回どうしよう…

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