古書買取人までのストーリー。仕組まれた試練その3 これはある古書店で行われているフィクションの修業物語 古書買取 古本見積 大山堂書店

これはある古書店で行われているフィクションの修業物語

「住宅街だと車を停めるところがありませんね」

その日も若い店員は店長の古書買取にお供していた。運転手兼荷物運びの仕事である。

「しょうがないの。それじゃどこかに停めて車の中で待っていてくれ」

車のドアをあけると蒸し暑さが車内のクーラーの涼しさを奪っていく。
店長は集合住宅の号棟数を確認して、縦階段を上っていった。

近くに停めて10分ほどしてからだろうか近くの住人が車外に立っていた。

「ちょっと、ここにエンジン付けたまま停まらないで。アイドリングの音もうるさいし…」

「あ、すみません。すぐエンジン切ります」

住民はブツブツ言いながら帰って行った。エンジンを切ったら車内があっという間にサウナ状態に。窓を開けると蚊が入ってくる。
店長の見積もりはたいてい1時間くらいかかるから、あと50分近くもこの試練に耐えなければならないのか・・・。

さっき怒られた近くの住人がまた出てきて露骨に嫌な顔をする。そして車のプレートナンバーを控えながらまた家に帰って行った。
まったく不審者扱いである。

車を動かし、カーエアコンの涼しさに感謝しながらコインパーキングを探すのだがどこにも見つからない。
ぐるぐる回っているとようやく店長から電話がかかってきた。

「いまどこ?すぐ来てくれ。まずは全体像を見て欲しいのじゃ」

集合住宅前に着くと店長が待っていた。全体像を見て欲しいということはそれほど量がたくさんあるのだろうか。

(もしかしたら僕に査定をさせてくれるのだったら嬉しいな)

と思いつつ、店長の後に続いて4階まで階段を上った。

4階に上ると風が強いことに気付いた。いつのまにか雷雲も出ているようだ。

「こりゃ、ひと雨降るかもしれん。急いで作業しよう」

全体像はざっと400冊くらいだろうか。乗ってきた車に入り切るか微妙である。

「どう思う?」

店長がお客がいない場所で若い店員に聞いた。

「30くらいっすかね?」

「ほう、30で済むかの?」

お客がきたので、とりあえず運び出すことにした。ドアを開けると強風が入ってくる。

店長がお客とまだ話しているので、若い店員は4階までの階段を何度か一人で往復することになる。

搬出が終わる頃、3階と4階の階段の踊り場で、若いがさすがに疲れてしまったのだろうか、膝が笑ってしまったようによろけてしまった。

「あ!」

バランスを崩した拍子に合わせて風が横から吹き、古書が縦階段から1階にバラバラと落ちていったのだった。

すぐに部屋から出てきた店長は若い店員が怪我をしていなかったことを安心し、階段の踊り場から下を確認した。


「ふふふ、これがホントの降る本や(古本屋)だわな」

と、つぶやいては一人でクスリと笑った。


その一言で、若い店員はさらに疲れがどっと出た。笑えない。膝だけが笑っているのである。


本の次は、本当に雨が降ってきた。


まだ載せきれない書籍が階段の踊り場に集合している。

「ほら、30以上あるじゃろ?」

「え?30万円以上で古書買取したのですか?」

「ちがうわい。『ダンボール30箱以上ある』って話」


店長とはいまだに会話のテンポが合わない。

「まだまだ見立ても甘いよの~。しょうがない乗り切れない本は助手席に載せなさい」

「え?それじゃ店長が乗れないじゃないっすか?」


重ねると重くなる本は、後ろに積めば積むほど車体が沈む。車体が沈むと排気口など金属部分がコンクリートと擦れて火の粉が出る時があるのだ。

「古書を後ろに積み過ぎて警察に『過積載』を怪しまれるより、助手席に積んで前後の安定を量ったほうがよいじゃろ。わしは電車で帰るよ」

「それは悪いですよ。僕が徒歩と電車で帰ります」

「それだと、試練にならんかも・・しれん・・し・・・」

そう言いながらクスリと笑うと、傘をさして駅の方に歩いて行ってしまったのであった。


高速道路を使い、店に早く着いてから若い店員は気付く。

この重たい本を運ぶのに運転に気を遣い、さらに雨の中、
『車の中の全てを一人で店の倉庫に運ばなければならない』
ということを・・・。


若い店員の修業はまだまだつづく。

店長が次の修業のためにどんな仕組み(やダジャレ)を用意しているかも知らずに・・・。

つづく。


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限りなく実話に近い…。

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