2つの吉祥寺? おすすめしたいスポット
吉祥寺駅はJR中央線と井の頭線沿線にあり、交通の便が良いことから住宅地おすすめスポットとして有名だ。
しかし今回おすすめしたい吉祥寺スポットとは、吉祥寺駅ではなく、文京区本駒込にあるお寺の「吉祥寺」である。
○2つの吉祥寺が存在する!
吉祥寺の創建は室町時代と伝わり、太田道灌が江戸城築城の時に掘った井戸の中から「吉祥増上」という刻印が発見され、現在の和田倉門のあたりに「吉祥庵」を結んだことが始まりと伝わる。
徳川家康の時世に吉祥寺は江戸城の都市計画のために、神田駿河台に移され、明暦の大火(1657年)で焼失し、現在地の本駒込の地に移転した。
その際、神田駿河台にあった吉祥寺の門前町の人々だけ武蔵野市に移住し、新田を開いて吉祥寺新田と称し、これが現在の武蔵野市にある吉祥寺という地区になっている。ここには地名だけ存在し、お寺は存在しない。
2つの吉祥寺を混同してしまいそうだが、お寺が存在するのが本駒込である。
本駒込の吉祥寺は広い敷地に、たくさんの見どころがあり、寺めぐりの好きな人にぜひおすすめしたいスポットだ。
恋愛に効く? 吉祥寺おすすめスポット
○おすすめスポット1 八百屋のお七・吉三郎比翼塚
明暦の大火といえば、八百屋のお七の振袖火事という呼び名で有名だ。
諸説ある中で、八百屋のお七一家が焼け出された最初の火事の避難先は吉祥寺だと言われている。吉祥寺の寺小姓をしていた吉三郎に恋をしたお七。吉祥寺を八百屋のお七の恋物語発祥の地として記憶している方も多いかもしれない。
結局お七は放火の罪で処刑されてしまうが、吉祥寺の境内にある「八百屋お七・吉三郎比翼塚」を眺めていると、当時の二人の恋物語が偲ばれる。
○おすすめスポット2 縁結び吉祥観音
本堂正面から向かって左側に、真っ白い美しい観音像が立っている。
かなり高い位置に立つ縁結び観音は、近くへ寄ると見上げる格好になると思う。すると観音さまがにっこり優しげに笑って見えるのだ。観音さまの表情の移ろいを、ぜひ実際に目で確かめてほしい。
八百屋のお七の恋物語に縁結び吉祥観音――恋の縁結びに効きそうなおすすめスポットだ。
吉祥寺おすすめスポットをめぐる
○おすすめスポット3 勉学
吉祥寺の大きな山門に掲げられている額には「旃檀林」(せんだんりん)と記されている。吉祥寺は江戸時代、曹洞宗の学僧の学寮でもあり、修行の場でもあった。
旃檀林は現在の駒込大学の前身でもある。
吉祥寺境内には二宮尊徳基があり、そのすぐ横にあるのは、幼い尊徳が薪を背負って本を読んで歩いているお馴染みの像。
1939年(昭和14年)9月24日付けの報知新聞には、二宮尊徳の遺骨が駒込吉祥寺で発見され、84年ぶりに埋葬されたとニュースになっている。新聞には尊徳の遺骨であるという子孫の証言が掲載されているが、二宮尊徳の遺骨が84年間も放っておかれるはずはないと異説もある。
○おすすめスポット4 歴史
境内の中でも一際目立つ、存在感のある古い経蔵。吉祥寺の経蔵は貴重な江戸時代の建造物として、区指定有形文化財(建造物)に指定されている。
旧経蔵は1686(貞享3)年に建造され、1度焼失したと伝わっており、現在の経蔵は焼け残った旧経蔵の礎石をもとに、1804(文化元)年に再建したもの。その後、1933(昭和8)年に大修復を行っている。
蔵内には、経典を収蔵する八角形の転輪(てんりん)蔵が置かれているが、内部を拝観することはできない。
しかし外側をぐるりと一周してみると、その見事な彫刻に江戸職人の気質を感じられることと思う。
○吉祥寺めぐり おすすめコースは?
見どころの多い吉祥寺。古くどっしりとした門構えから見えるのは、両側に植えられたしだれ桜の並木参道だ。
私が訪れた際には桜は咲いていなかったが、広い参道をゆっくりと散歩をする人々の姿が印象的だった。
そこから八百屋のお七と吉三郎の比翼塚、二宮尊徳基と左手に眺めながら少し歩くと、右手に古い経蔵が見えてくる。
さらに参道を進むとやがてシンプルな造りのヨモギ色の屋根の本堂が見えてくる。本堂にお参りしたら、左手の吉祥観音に縁結びの祈願を。
地元の人たちは、吉祥寺を「きちじょうじ」ではなく「きっしょうじ」と呼ぶらしい。
それにならって、私もこれからは本駒込の吉祥寺は「きっしょうじ」と呼びたい。
吉祥寺 おすすめスポット!
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